「着物が大好きなのに、落ち込んでしまう…その理由とは」『難しいを難しくないに!』Vol.16 【女将紅子コラム】

月に一度、女将紅子が仕立てや和裁の基本、お客様からのよくある質問などをコラムでお届けします。

『難しいを難しくないに!』をモットーに、着物作りに役立つ知識を分かりやすく解説し、着物ライフをもっと楽しくするお手伝いをいたします。ぜひご活用ください。

第16回目は

「着物が大好きなのに、落ち込んでしまう…その理由とは」 をお届けします。




今月は、着物の役立つ知識ではありませんが、着物好きな方にどうしてもお伝えしたい内容です。

日々、着物と向き合い、お稽古に励んでいらっしゃる皆さま、「こんな風に着たいのに、どうして上手くいかないんだろう」と、ご自分にがっかりして、悲しい気持ちになってしまうことはありませんか?

実は、大人になってから「できない自分」と向き合うのは、想像以上にエネルギーが必要。そしてときには辛い作業でもあります。
仕事や家庭で、ある程度のことは器用にこなせる大人な私たちだからこそ、思い通りにいかない着物=布に、つい自分自身を否定されたような気持ちになってしまうのかもしれません。

でも、そんな風に落ち込んでしまうのは、
それだけ「真面目で、着物に対して誠実である」
という証拠だと思います。

着物を着る事が思うようにいかないとき、
実は一番の原因は技術不足ではなく、ご自身の「執着」から由来することが多いです。
「完璧にこなさなきゃ」
「ここを直さなきゃ」
と強く思うほど、知らず知らずのうちに全身に力が入り、肩が上がってしまうのです。
体がガチガチになってしまうと、着物=布は素直に体に沿ってくれません。

着物は、どこにも力が入っていない「ニュートラルな状態」で手に取るとき、一番美しく体に添ってくれます。

もし今、自分にダメ出しをしたくなっているのなら、一度深呼吸をして、その執着をふっと手放してみてください。「何のために着物を着るのか」という原点——。それは、幸せを感じたり、豊かな時間を過ごしたりするためだったはずです。

ご自分に厳しくするのではなく、今の自分を優しく受け入れて、肩の力を抜いてみませんか。 着物は、頑張りすぎるのをやめたとき、驚くほどスルリと着られるようになるものです。

皆さまの着物時間が、少しでも軽やかで、幸せなものでありますように。


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