「着物の身丈 肩から、背から 何が違うの? 」 『難しいを難しくないに!』Vol.5 【女将紅子コラム】
月に一度、女将紅子が仕立てや和裁の基本、
『難しいを難しくないに!』をモットーに、
第5回目は
「着物の身丈 肩から、背から 何が違うの? 」
をお届けします。どうぞ最後までご覧くださいませ。
お客様と着物の寸法について、日々メールでご相談をお受けしておりますが、身丈について必ず詳しくお聞きしなくてはならないことがあります。
それは身丈の寸法が
肩からなのか、
背からなのか、という点です。
同じ身丈という寸法なのに、なぜ詳しくお聞きしなくてはならないのか、
それは同じ着物でも、肩からの身丈と背からの身丈は異なる寸法だからです。
上の図をご覧いただきますとお分かりいただけると思いますが、
上部のスタート位置が異なります。
肩からの方がスタート位置が高く、
背からの方がスタート位置が低いのです。
着物の寸法のことはよく分からない!!と匙を投げたくなるかも?
しかし、案外に難しくなりませんよ!
さあ、紐解いてゆきましょう。
身丈に対する考え方はお人によって異なりますが、紅子の寸法を一例と致しましょう。
紅子の身長 165㎝。
背からの身丈 約165㎝(尺貫法表記:4尺3寸6分)
肩からの身丈 約170㎝ (尺貫法表記:4尺4寸9分)
背からと肩からの身丈の差は約5㎝。
この差はどこから??
その差は、
繰越という寸法と、
通常あまり寸法表に記載されていない衿の付け込み(縫込みとも)、つまり縫い代の寸法
この2つをプラスした数字です。
※繰越とは、すごーく簡単に申しますと、後ろの衿を抜くための寸法
(男性は繰越がありません)
※衿の付け込み(縫込み)とは
着物の身ごろと衿を縫う際に必要な縫い代のこと
衿周りのより詳しいイラストをご覧ください。
先ほどの着物の名称では、付け込みは細かい部分ですので、
触れておりませんが、詳細は以下のようになっています。
計算式で表しますと、以下の通りです。
肩からの身丈-背からの身丈=繰越と付け込み(縫込み)
紅子の寸法は以下の通りです。
繰越 約3㎝ (尺貫法表記:8分)
付け込み(縫込み)約1.9㎝ (尺貫法表記:5分)
※この付け込みの寸法はごく一般的
おおよその場合はこの約1.9㎝ (尺貫法表記:5分)だと思います。
先ほどの計算式に当てはめてみましょう。
肩からの身丈約170㎝ (4尺4寸9分)-背からの身丈約165㎝(4尺3寸6分)
=繰越約3㎝(8分)と付け込み(縫込み)約1.9㎝(5分)
着物の仕立てをいつもの方や、いつものお店にお願いしている方は、
このような寸法のことを把握する必要もないかもしれませんが、
着物の入手方法はさまざま。
リサイクルでお選びになる場合もあることでしょう。
お店によって身丈は肩からなのか、背からなのか、ポリシーはそれぞれ。
※ちなみに木下着物研究所は背から
身丈についてご説明しましたが、
どうでしょう??
字の羅列で難しいでしょうか。
それとも紐解いてゆくと、案外そーなの??と思っていただけるでしょうか。
着物の寸法はちょっと難しく感じることもあるかと思いますが、
このコラムでもすこーしずつ取り上げてゆきますので、是非慣れていただけたらと思います。
着物の寸法がなぜ難しく感じるのか、それは触れる機会が少ないから。
このコラムで、触れる機会を増やしてくださいね。