「伝統とは?」『日本文化を生きる』Vol.4 代表 木下勝博

木下着物研究所 代表 の木下勝博です。
今回は「伝統とは?」というテーマを取り上げたいと思います。
私たちのように着物や茶道など日本の伝統文化に関わる仕事をしていると、"大切な日本文化の「伝統」を継承し後世に伝える素晴らしい活動"としてポジティブな評価をして頂き、改めてこの仕事とのご縁に深く感謝しています。
さて、現在、私たちが使っている、古くからの習わし、文化という意味での「伝統」は、意外にも最近定着したものだと言います。
もともと「伝統」という言葉は、古代の中国の『後漢書』に出てくるようですが、もともとは主に皇位の継承や血統の連続というような意味合いだったようです。幕末から明治にかけて、英語のTraditionという概念が流入し、当初は「口伝」「伝説」「慣習」など様々な訳語が当てられましたが、昭和になり「伝統」という言葉が定着したようです。

現代日本人の私たちが "古から継承されている文化" という意味を持つ「伝統」いう言葉の意味さえも、実は長い日本の歴史の中では"伝統ではない"ことだと知ったときにはとても新鮮でした。
着物や茶道など日本の"伝統文化"や老舗と言われる企業など長く続く「伝統」的なものほど、実は「伝統=変わらない普遍的なもの」ではなく、「伝統=時代に合わせて柔軟に変化した結果残ってきたもの」だということに気づきます。
「伝統」を一本の糸だとするならば、それはお蚕さんが吐き出した極細の一本の糸をそのまま残すのではなく、何本もの糸を合わせ、丁寧に撚り、未来へ続くしっかりした一本の糸にしていくことと言えるかも知れません。
「伝統」は守るものではなく、紡ぐもの。
【バックナンバー】
「季節と生きる」『日本文化を生きる』Vol.3
「生活の中の和」『日本文化を生きる』Vol.2
「初めての体験」『日本文化を生きる』Vol.1
