「衣替えと、見えないお手入れの心地よさ」『今こそ“着物”』VOL.29 都田恵理子さん

食や美容などライフスタイルの分野で活動する都田恵理子さん(ローフード研究家)による暮らしと着物を愉しむコラムを月に1回お届けしています。

 

今回は、「衣替えと、見えないお手入れの心地よさ」をお届けしたいと思います。

「衣替え」と聞くと、洋服をまとめて洗いに出す、クローゼットの中身を入れ替えたり、収納スペースを整理する片付け作業を思い浮かべる方が多いかもしれません。

でも、着物における衣替えは、一枚一枚の着物に向き合って「次に気持ちよく袖を通すために、今なにをしておくか」と考える時間が大切になります。

それは、洋服の衣替えが「片付け」であるなら、着物の衣替えは「対話」のようだなと思います。

 

着物の扱いについて、研究所の代表・勝博さんにお話を伺ったことを参考に、先日、この秋の衣替えを無事に終えることができました。

洋服と違い、着物は丸洗いが当たり前ではなく、単衣や夏物であれば、たとう紙から出して風を通し、汗や汚れの有無を確かめて、一枚ずつ状態を見極めて必要があれば、専門の手入れをするのが大切なのだそうです。

収納の際は、化学的な防虫剤よりも天然の防虫香がおすすめとのこと。正絹の着物は本来虫がつきにくいものの、食べこぼしや皮脂汚れが原因になる場合もあるので、これは日頃からの心がけで防げることも多いと思います。

また、たとう紙も湿気を吸いやすいため、カビが着物に移る原因になるそうで、一定の期間を過ぎたら交換するのが望ましいと教わり、私も新しいものに取り替えてみました。紙の清々しさに、不思議と気持ちもすっと整うような心地よさがあります。

洋服と違って、着物は手軽に洗ったり畳んだりできるものではありません。でも、そのぶん手をかけた時間がこうして愛着につながっていくものなんですね。

丁寧にお手入れをする時間の豊かさを知った今年は、実家の箪笥の前で、母と一緒に衣替えをしようかと思っています。今からその時が楽しみでなりません。

※こちらのコラムは、毎月1回配信してゆきます。

【プロフィール】

都田恵理子(みやこだえりこ)ローフード研究家

オーガニック業界での広報職を経て、体にやさしい食や美容を専門に情報発信を手がける。madame FIGARO.jp などで活動。譲り受けた和装小物や日本の伝統文化に触れ着物に関心を抱く。