「自分の体感に合わせて柔軟に。」『今こそ“着物”』VOL.28 都田恵理子さん

食や美容などライフスタイルの分野で活動する都田恵理子さん(ローフード研究家)による暮らしと着物を愉しむコラムを月に1回お届けしています。

今回は、「自分の体感に合わせて柔軟に。」をお届けしたいと思います。

暦の上では「秋」を迎えています。

少しずつ日差しも和らいできて、夜になると虫の声に季節の移ろいを感じるようになりました。
とはいえ、日中はまだ汗ばむ日が多く、「単衣(ひとえ)」の着物を着るには、ちょっと暑すぎると感じることもあるのが、近年の9月です。

本来、着物の衣替えには「6月と9月に単衣」「10月から袷(あわせ)」という決まりがあります。でも、最近の気候では、そのルールが必ずしも現実に合っていないことも多いですよね。だからこそ、昔ながらの決まりを参考にしつつも、自分の体感や体調に耳を傾けて選ぶ柔軟さが、いまの時代の着物の楽しみ方なのだと感じます。

木下着物研究所のお二人の日常からは、「無理をしないこと」「工夫して楽しむこと」の大切さを、いつも教えていただいています。

実はこの“衣替えの感覚”は、食事にもとてもよく似ているんです。夏の間に冷たい飲み物や食べ物が続いた身体は、気づかないうちに内臓が冷えていることも。


そんなときは、急に食事を変えるのではなく、温かい汁物を一杯、やさしい味つけの旬の野菜を一品というように、少しずつ身体を整えていくのがおすすめです。

食事もまた、気候に合わせて“急に切り替える”のではなく、“ゆるやかに整える”ことで、体が自然に季節になじんでいくもの。これこそ、「食の衣替え」ですね。

紅子さんが日頃から大切にしている、そんな少しずつ整える暮らしもとても参考になります。まずは、身体を冷やしすぎないこと。エアコンを強くしすぎない、飲み物に氷を入れすぎないなど、小さな工夫を積み重ねていらっしゃるそうです。

それから、「旬のもの・地のものを選ぶ」こと。木下農園で採れた野菜を中心に、季節に合った食材を選び、自家製のお味噌汁や梅酢、塩麹などを日々の食事に取り入れているのだとか。

どれも、体にやさしく、そして季節を感じられる暮らしの工夫ばかり。調味料も手作りされていて、料理の隠し味やアクセントになりながら、体調を整えるのにもひと役買ってくれます。

季節の変わり目は、気持ちも体もゆらぎやすいものです。だからこそ、着物も食事も無理せず、少しずつ自分のペースで整えていくことが大切なのかもしれません。

暑かったり涼しかったりするこの時期、自分の感覚に耳をすませて、木下着物研究所のお二人の「自分の感覚を大切にする衣替え」のヒントに、心地よい秋を過ごしていきたいです。

 

 

※こちらのコラムは、毎月1回配信してゆきます。

【プロフィール】

都田恵理子(みやこだえりこ)ローフード研究家

オーガニック業界での広報職を経て、体にやさしい食や美容を専門に情報発信を手がける。madame FIGARO.jp などで活動。譲り受けた和装小物や日本の伝統文化に触れ着物に関心を抱く。