着物の防寒のコツ、お教えします【くらしのこよみ友の会より】

[こちらは「くらしのこよみ 友の会」に2020年1月22日に寄稿させて頂きました記事の転載になります]

【くらしのこよみ友の会より】

暦は二十四節気の寒さが最も厳しくなる「大寒」です。


例年は本当にこの時期は寒いですが、今シーズンはそこまで厳しい寒さの日には出会っていない気がします。

さて、毎日着物生活をしていると「冬は寒くないのですか?」とか「防寒はどうするのですが?」というご質問を頂くこともしばしば。今回は着物の防寒についてお話します。 

結論から申せば、防寒に関しては着物も洋服もあまり変わりがありません。寒ければ上着を着て、さらに寒ければもう一枚羽織り、下着にも保温性の高いものなどを身につけます。

<1.柳色と女郎花色が横段になった米沢紬の羽織>

 

ただし、着物の形は洋服とは異なるため、それぞれ着物の上からも着られる形である必要はあります。着物は洋服とは異なり、袖の振りがあるために筒袖状になっている洋服用のコートや羽織ものは着ることができません。

 

<2.衿を菱形にした薄手の道行コート>

 

着物の上に着る防寒着としては、まず、着物と同じようにシルクやその他の素材などで作られた道行や道中着と言った着物コート、羽織といった羽織物があげられます。さらに寒いとウール素材などの防寒用のコートとなります。

 

<3.羽二重という生地をシックな色で染めた羽織>

 

昭和の高度経済成長期などは、コート用や羽織用の反物などもたくさん作られていましたが、昨今の生産量の少なくなり、着物用の反物を使って誂えることが増えました。

<4.羽織は室内で着たままでもOK>

羽織はもともとは男性が着ていたものを江戸時代に芸妓衆が着始めたことで流行り女性も着始めました。

羽織がその他のコートと異なることは、羽織はいわばジャケット、そのため室内でも着用したままでも良いということです。道中着や着物コートのように室内に入っても脱がなくてよいため、着物でお出かけの際には便利です。

 

着物初心者が迎える冬は、防寒は悩ましいテーマかも知れません。防寒着をまだ持っていないとか、どの程度、防寒をしたら良いのか分からないということも良くお聞きします。

<5.着物用ではなく洋服で使っているストールを合わせて>

 

そんな場合もあまり難しく考えずに、まずはお手元にある日頃使っているショールやストールなどを活用することから始めてみましょう。

<6.スーツ生地で誂えたコートにストールを重ねて/年初に暖かかった日の装い>

 

もともと着物は平面で構成されたデザインのため、大判のストールなどは相性がとても良いもの。写真のように着物の上から巻いて頂くと良いでしょう。

<7.ウール素材のしっかりした防寒用コート/以前ファッションブランドのmatohuさんとコラボしたコート>

着物の時に寒い部分は衿もとと手先です。本格的に寒い場合には、しっかり衿もとをガードし、また、手袋だけではなくアームウォーマーなどを活用するとだいぶ体感が変わってきます。

<8.厚手の防寒コートに厚手のストールで完全防備>

上記の写真は、年末の早朝に料理教室の先生と市場にお正月の買い出しに行った際の装いです。厚手のコートに厚手のストール、手袋にアームウォーマー、上下の下着も長いものを着用してしっかり防寒しましたが、例年に比べればそこまで着なくても大丈夫でした。

 

都市部にお住いの方が着物でお出かけする場合には、公共交通機関や地下道、出先の建物の中など暖房が効いているところも少なくありません。

 

昔の日本家屋は寒かったため、昭和戦後の冬場は厚手のウールを着物と羽織を”おつい”(ペア)にして誂えて、しっかり着込んだ姿などが見られました。

また、足袋も一般的な木綿の足袋以外にも、ビロード素材の別珍足袋もたくさん履かれていました。
個人的には最近は厚手の別珍足袋よりも、足袋に汚れ防止も兼ねて足袋カバーを重ねて履くことが多くなりました。


現代の住環境は暖かい場面も多いため、脱ぎ着ができるものが便利だと思います。あまり中に着込み過ぎると、気温や体温が上がって着たときに脱げずに熱くなります。
日本の衣服は「重ね着」の文化、上手に重ね着を取り入れて頂けると、着物も快適に着られると思います。

 

[写真]

1, 2, 3, 5, 7『あたらしい着物の教科書』(日本文芸社)より:大沼ショージ、武藤奈緒美
4, 6, 8:筆者