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久しぶりに着物で博多出張

[こちらは「くらしのこよみ 友の会」に2021年11月29日に寄稿させて頂きました記事の転載になります]

【くらしのこよみ友の会より】

毎日着物生活の木下着物研究所の木下勝博・紅子です。


引き続き不安定な状況が続いていますが、国内の情勢は少し落ち着いていることもあり、1年11ヶ月ぶりに福岡・博多へ出張に行ってきました。毎日着物のため、もちろん出張も着物です。

早朝に鎌倉を出まして、羽田空港から福岡空港へ。福岡空港は福岡市内にあるため、空港から博多駅まで地下鉄で2駅目でたった5分です!

今回の福岡出張の目的のひとつは、毎年この時期に開催される「博多織求評会」に伺うこと。

私どもは独立する以前は、老舗の博多織元の1社に勤め、同社の小売部門の立ち上げを行なっていました。拠点は東京だったものの、年に何回かは福岡にも出張で戻っていたので、久しぶりに地元に戻ってきた感じです!
[オリジナルの博多献上の名古屋帯、羽織も献上博多を着用]

「博多織求評会」は、博多の中心地にある承天寺という臨済宗の禅寺をお借りして博多織工業組合が毎年主催しています。

内部は撮影禁止のため写真でご紹介できませんが、組合所属の織元さんが多数の博多織の帯や着物の新作を出品しています。この求評会を見ると、その年の傾向が分かります。

さすが今年はコロナ禍で各社さん新作への取り組みは必ずしも十分でないようで、全体的に元気がない印象だったのは残念なところ。

今回の出張の2つ目の目的は、複数の博多織元さんを訪ねること。新作のオリジナル帯の打ち合わせやお互いの近況報告を行うこと。

上記の写真は、前職で勤めていた創業120年以上経つ博多織元の工房です。早いもので独立から6年ほど経ちますので、現場の織り手の職人さんたちも世代交代で若い方々が増えていました。久しぶりのお会いする職人さんたちは皆さんお元気で、博多のお母さんたちに再開でき喜びもひとしおです。


着物など伝統工芸の世界に限りませんが、ものづくりの現場の大きな課題は世代交代です。
50〜60年前の織機がいまだに現役の製造現場では、人も機械も年々歳を重ねてゆきます。

せっかく若い世代で着物に関心のある方が増えても、残念ながら全国の産地はどんどんと廃業が増しています。一度、手を止めてしまうとなかなか再開するのが難しいのがモノづくりの現場です。もともと高齢化が進む全国の産地ですが、このコロナ禍でさらに深刻さを増したと言わざるを得ません。

私どもができることは小規模だとしても、作り手の方々に商品をお願いし続けること。

そして、時折り産地の現場を訪ね、職人さん達とコミュニケーションを取りながら、こちらの想いを共有し、また職人さんの想いも着物ファンの皆さんにお伝えすることも、微力ではありますが私どもの仕事だと考えています。

博多の最後は、人気の博多の和菓子の鈴懸さんの本店で早い夕食と栗のパフェで締めました!

様々な産地に行って思うことは、美味しいものがある産地は良いモノづくりができるということ。しっかり美味しいものを確認することも仕事の一部???