鎌倉の霜月、身近に見つけたパワースポット〜鎌倉着物生活〜【くらしのこよみ友の会より】

[こちらは「くらしのこよみ 友の会」に2021年1月22日に寄稿させて頂きました記事の転載になります]

【くらしのこよみ友の会より】

毎日着物生活の木下着物研究所の木下勝博・紅子です。

鎌倉に越して3ヶ月が経過しました(このブログを書いた2020年11月29日時点)。
越した直後は鎌倉は暦は処暑でも、暑さはまだまだおさまる気配がない日々。そこからひと月過ぎひと月過ぎ、秋らしさを感じ始めたと思っっていたら深まってゆき、気づけば今年も師走を残すところとなりました。

拙宅の庭先には赤い実のなる草木が見られるようになりました。

 

こちらは南天(なんてん)。福寿草と合わせると災難が転じる「難を転じて福となす」ことから、昔から縁起の良い植物とされてきました。着物の世界でも南天をモチーフにした着物は帯はたくさん見られます。

 

こちらは万両。南天に負けずとても縁起の良いお名前。

 

万両は上部にのみ葉と実がなり、ひょろっと長い茎はそこまで高さがないのが一般的かと思います。拙宅が古民家だけにこちらの万両も結構な年齢なのか、背丈が130-140cmくらいあります。


1万両は江戸の末期頃で、1億五千万円くらいだとか...長寿の万両、金運がよくなりそうです。

そして、千両。万両に比べれば赤い実の数は少なめ。


以前はどれが十両、千両、万両、南天となかなか見分けがつかなかったのですが、身近になってくると自然と覚えられそうです。

少し前までただの枯れ葉にしか見えなかったものが、豊かさに見えるのだから不思議です。右の種は恐らくヤブツバキ。

 

都会から引越し3ヶ月。都会では見過ごしてしまいがちな季節の移り変わりが目が向くようになりました。その時々、表情を変える風景を通して、昔の日本人は生活の中に様々なものに縁起を担いだことがよく分かってきます。

鎌倉という場所は食の文化レベルも高く、ご近所にこんな秋の実りを食させてくださるお店があることも、感性を刺激するにはとても大切です(と自分への言い訳としています(笑))。

 

昔の日本家屋はよく出来ていて、秋も深まってくると夏には入って来なかった日の光が室内の奥にまで入ってきます。

 

晴れた秋晴れのには、昭和初期頃のガラス戸からは、庭先の梅の影が水墨画のように描かれます。これを計算して建てられたのだとすると、脱帽です。

 

日々の中でこういう刺激を受けていると、コロナ禍の中で滞りがちだった、新しい着物や帯の商品開発にも力が向きそうです。

新商品のご紹介までには少し時間が掛かりそうですが...鎌倉生活の成果を一つご報告させて頂きます。

 

先日、7年程続けています水墨画・墨閃会の社中展があったのですが、この度、拙作「松図」が社中展にて大賞を頂くことができました。


引越しをして2ヶ月ほど経過した10月中旬に、この築90年の古民家以上の年齢であろう松をモチーフに描きました。松もご存知の通り、通年緑を保ちたいへん縁起の良い樹木です。

 

今回、作品の装飾である表装を長野県の安曇野にいらっしゃる若手表具師の岸田田さんにお願いしました。当方の持ち込みの生地を活かし、的確かつとても素敵な表装をして下さいました。お軸の先につける軸先を古いお軸からとった竹をご提案下さいました。

 


モチーフの松、軸先の竹。そして、この作品を掛けることになる床の間のある和室の庭先には...梅。松竹梅、揃いました。