着物での収穫作業〜鎌倉着物生活〜【くらしのこよみ友の会より】



[こちらは「くらしのこよみ 友の会」に2020年10月30日に寄稿させて頂きました記事の転載になります]

 

毎日着物生活の木下着物研究所の木下勝博・紅子です。

東京・高輪から神奈川県鎌倉市に引っ越しまして2ヶ月が経過しました。鎌倉に引っ越し、まず大きく変わったのは、緑や土との距離感でしょうか。庭の広い古民家に移住したことで緑や土に触れることが増えました。
敷地内に大きな柚子の木があるのですが、引っ越した8月後半は青かった柚子がここ数日で急に色づいて来ました。慌てて先日収穫を始めました。大半は手が届かないに柚子が生っているので、脚立を引っ張り出しての収穫です。


さすがに普通の着物スタイルでは脚立には上れません。こういう作業には、長襦袢をはしょり、袴状のパンツを履き、上から上っ張りを羽織ってのスタイルです。最近は自転車に乗りご近所の郵便局に行くなど、このスタイルが定着して来ました。
毎日着物生活ですと、一般的なイメージのシルクのお出かけの着物だけではもちろん生活できませんので、綿や綿麻、ウールなど自宅でメンテナンスしやすい素材の着物を始め、足さばきがよくするために袴状のパンツや茶道などでも使う水屋袴なども活用し、日々の作業をこなしてゆきます。


ところで風情のある平屋の隣家には、たわわになった柿の木があります。10月中旬ごろより、こちらには毎日リスとカラスが熟れごろの柿をつつきに来ます。動物は本当に美味しいものを知っています。少し前にうちの数少ない柿もやられました...。

鎌倉というとリスのイメージがありますが、近年、写真に写っているタイワンリスという少し大きいリスが害獣として増えているそうで、農作物だけでなく、家の電線などを切ったりなどの被害もあるそうです。
犬とは少し違うけれど、ワンワンと聞こえる鳴き声が時折聞こえてくるのですが、このタイワンリスのものあることを最近知りました。先住民のリスをも上手く付き合ってゆく必要がありそうです。

黄色く色づき始めた柚子ですが、一部まだ青い柚子を使って柚子胡椒を作ります。青唐辛子にちょうど輪島の方に頂いた能登の塩を合わせて柚子胡椒を作ります。今まで柚子胡椒を作ろうと思ったことはありませんでしたが、自宅で柚子がたくさん取れるとなると作りたくなるものです。


鎌倉に引っ越して来て、毎日やることの多い生活に変わりました。年初から始めた毎日のYouTubeの動画配信を継続中なのも一つの理由ですが、そこに加えて日々の生活そのものがやるべきことが増えました。

つまり、都会のコンビニエントな生活から、古い家ならではの雨戸の開け閉めや庭の草引きなど、生活の衣食住のひとつひとつの手間と言えば良いでしょうか。
でも、それが嫌な大変さかと言えば、さにあらず。昔の方は生活の中でするべきことがたくさんありながら、家族で様々なことを分担し、四季折々の中に豊かさを見出していたのだなぁと感じる日々です。