「“本当に良いもの”を残していくために」『今こそ“着物”』VOL.36 都田恵理子さん

食や美容などライフスタイルの分野で活動する都田恵理子さん(ローフード研究家)による暮らしと着物を愉しむコラムを月に1回お届けしています。

今回は、「“本当に良いもの”を残していくために」をお届けしたいと思います。

先日、茶道具店の方とお話をする機会がありました。そこで印象的だったのが、「最近は海外のお客様が本当に増えました」という言葉でした。そして、この先の内容に驚きます。

お客様は海外で茶道を学んでいて、外国人の先生に師事している方も多く、日本に旅行で来たタイミングで茶道具をたくさん買い求めるとのこと。

「海外では実際に見比べて選べないので、日本で選びたい」とおっしゃる方も多いのだそうです。

日本では当たり前のように感じている工芸品や茶道具が、海外では“特別なもの”として大切に求められていることに、改めて気づかされました。

その一方で、日本国内の伝統工芸の世界では継承者不足が大きな課題になっています。例えば、お茶碗の絵柄が描ける後継ぎがおらず、今後続けていくことが難しい工房も少なくないそうです。

この茶道具店の方のお話を伺い、技術や文化は、良いものだから自然に残るというわけではなく、実際には使う人、魅力を伝える人、経済的にも支える人がいて初めてこの先の未来へつながっていくのだと感じました。

着物も同じかもしれません。実際に袖を通し、出かけ、時間を楽しむことで、その価値は次の世代へ受け継がれていくのだと思います。

 

NEWSページでご覧になった方も多いかもしれませんが、木下着物研究所でも、この春からさまざまな見直しを行い、【サービス内容のリニューアルと「伝統の継承」に向けた決意】をお知らせくださいました。

今あるものをさらに整理とブラッシュアップをしながら、私たちにとって「本当に大切なもの」を提供するために、より力を注いでいくための取り組みとなるようです。

数や便利さだけではなく、心地よく、長く愛せるものを残していくこと。これからの着物やで伝統をつないでいくために今必要なのは、この視点なのかもしれません。

新緑の心地よい季節、私のお気に入りの一枚に袖を通しながら、改めて「残していきたいもの」について考えたのでした。

※こちらのコラムは、毎月1回配信してゆきます。

【プロフィール】

都田恵理子(みやこだえりこ)ローフード研究家

オーガニック業界での広報職を経て、体にやさしい食や美容を専門に情報発信を手がける。madame FIGARO.jp などで活動。譲り受けた和装小物や日本の伝統文化に触れ着物に関心を抱く。