「想いをまとう浴衣、もっと自由に」『今こそ“着物”』VOL.25 都田恵理子さん

食や美容などライフスタイルの分野で活動する都田恵理子さん(ローフード研究家)による暮らしと着物を愉しむコラムを月に1回お届けしています。

今回は、「想いをまとう浴衣、もっと自由に」をお届けしたいと思います。

 

先日、浴衣を着物のように襦袢を合わせて衿元と足元を整えることで、涼やかさと上品さを兼ね備えた「浴衣の着物風スタイル」を楽しんでいる方を見かけました。

「浴衣は夏祭りで着るもの」、多くの方には、そんなイメージがあるかもしれません。でも、浴衣は本来、湯上がりや夕涼みの装いとして、もっと日常の近くにあったものでした。

女将の紅子さんが紹介する浴衣は、そんな本来の浴衣の魅力を、今の暮らしにしなやかに溶け込ませるスタイルです。

その想いを知ると、浴衣は、単なる「涼しい着物」ではなく、日常にも、自分らしく和をまとうための、新しい選択肢なのだと思います。



すでにお召しになっている方もいるのではないでしょうか。浴衣に使われている技法(織り・染め・素材加工など)は、素晴らしいこだわりを感じます。

まず、モダン×古典柄の「ちょっと見かけない浴衣 灯影文(ほかげもん)黒地に檸檬 [紅衣オリジナル]は、綿素材ながら、四本の太い糸が格子状に透ける美しい生地が特長。

肌にまとわりつきにくく、蒸し暑い夏の日にも涼やかな着心地なのだそうです。


次に、「オリジナル浴衣 椿障子 鼠地に赤[紅衣オリジナル]」は、椿と障子という古典的なモチーフを、現代の感性でアレンジし、手仕事ならではの温もりと奥行きのある表情に仕上げられています。


生地の透け感は控えめで肌あたりがさらりとして、襦袢を重ねれば夏着物としても美しく着こなせるのだそうです。

この「椿障子」という柄には、何気ない風景のひとつひとつがインスピレーションになっていて、私が訪れた研究所は、築百年の古民家を改装した建物で、庭に椿の木があり、障子越しに差し込むやわらかな光が印象的でした。

まさに、紅子さんの日々の風景と手仕事から生まれた一着が、日常にそっと寄り添ってくれるんです。

一枚で二通りの楽しみ方ができるという意味でも、とても実用的な浴衣。数反のみの小ロット生産というのも、特別感を感じさせてくれます。

梅雨時期から、暑さとの戦いです。この夏は、浴衣で過ごしてみませんか。



※こちらのコラムは、毎月1回配信してゆきます。

【プロフィール】

都田恵理子(みやこだえりこ)ローフード研究家

オーガニック業界での広報職を経て、体にやさしい食や美容を専門に情報発信を手がける。madame FIGARO.jp などで活動。譲り受けた和装小物や日本の伝統文化に触れ着物に関心を抱く。