「思い出のワーンシーンにある着物」暮らしと着物を愉しむコラム『今こそ“着物”』VOL.15 都田恵理子さん



食や美容などライフスタイルの分野で活動する都田恵理子さん(ローフード研究家)による暮らしと着物を愉しむコラムを月に1回お届けしています。


今回は、「思い出のワーンシーンにある着物」をお届けしたいと思います。

暦の上では、夏の暑さが終わる頃。それでも続く暑さのなかにトンボの姿を枝先に見つけたり、夜にはひんやりとした風が吹き始め、次の季節へのうつろいを徐々に感じています。


みなさまは、この夏を満喫されましたでしょうか。そんな夏は、一年のなかでもイベントが多く、それだけ思い出の数も多いのだそうですよ。

 記憶の中で、私が一番好きな思い出は、実家のある鳥取で過ごした頃にまで遡りますが、幼少期のこと。とうもろこしやスイカをかじり、地域のお祭りで浴衣を着せてもらい、家族と過ごしたことが記憶に残っています。


今思うと、大切なイベントや集まりの場に和装があり、それを思い出すことが、私にとって“懐かしく思える瞬間であり、忙しく過ぎる日々に自分らしさを取り戻す役割を担っていることに気づきます。


また、紅子さんにとっても鹿児島のお祖母様と着物の関係をめぐる大切な思い出が残る季節なのだそうですよ。


施設にいらしたお祖母様が記憶の道を行ったりきたりするなかで、紅子さんが着物をきてゆくと、その着物にご興味を示したり、お姉様に作られた振袖のお話をなさったりもしたことも。


紅子さんにとって着物は、お祖母様と過ごした大切な思い出の中に、あかりを灯すような存在なのですね。


心温まる「着物と思い出」のエピソードの数々、それが着物と自身をつなぐ力となっていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。


気がつけば、残暑の厳しさも残りわずか。お食事会に、茶道のお稽古に、涼しく着られる単衣の季節を思いきり楽しみたいと思います。

※こちらのコラムは、毎月1回配信してゆきます。

【プロフィール】

都田恵理子(みやこだえりこ)ローフード研究家

オーガニック業界での広報職を経て、体にやさしい食や美容を専門に情報発信を手がける。madame FIGARO.jp などで活動。譲り受けた和装小物や日本の伝統文化に触れ着物に関心を抱く。