着物が生まれた背景にあるもの〜日本の豊かな自然と色〜

最近、改めて着物って面白いと思います。

ほぼ毎日着物という生活が10年以上になりました。こうなってくると着物はまさに身体の一部となり、特別なものではなくなります。
着物を着始めた当初は、よく袖口をどこかに引っ掛けたり、長い袖を持て余したりしていましたが、気づくと意識することなく、振る舞えるようになります。

着物生活をしだしてから、変わったのは着るものだけではありません。
現代の西洋化された住居はドアノブなど出っ張りが多く、着物を引っ掛ける場所がたくさんあります。慣れているとは言っても何かのタイミングで引っ掛けることもあります。また、着物を畳む時には着物を床に広げるため畳がないと不便です。着物をハンガーにかけて吊そうと思っても引っ掛けるところがあまりありません。足袋を履いているとフローリングは滑ってしまい生活がしづらいのです。

そんなことから日本家屋に住むようになりました。現在はどの部屋も畳の部屋で家の扉は全て引き戸という家です。

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衣服はその土地の気候風土や生活習慣などから形成されます。これだけ湿度の高い日本では、身体にぴったりとした西洋式の服は生まれませんでした。
いわゆる着物に限らず、弥生時代の服のイメージを代表する貫頭衣(かんとうい)や、作務衣や甚平のような広い意味での和服も、西洋の服に比べればスキマや空間が多いのが特徴です。これは身体に風を通して湿度を逃がすためだと言えると思います。一方、乾燥している欧州などの気候では、逆に身体の乾燥を防ぎ一定の湿度を保たせるように袖口や衿周りは衿まわりは身体にビタッと合うようにボタンで締める構造になっています。

これは日本家屋も同じことが言えます。木と紙や土壁で作られた日本家屋は、湿度を調整し、空気の通り道がたくさんあります。昔は夏場は大胆に開け放ち、ガラス窓を使うようになる前は、屋根と柱だけのようなものです。蚊帳もそんな環境から生まれたものです(現代では防犯上もなかなかそういうわけにはいきませんが)。
それに対して、石造りで密閉性の高い西洋式の家屋は、厳しい自然環境の中で寒さや外敵から人を守りました。ロンドンに住む姉のところに行くと、築100年以上の石造りの家は珍しくなく、雨の多いイメージのイギリスも日本に比べれば乾燥しています。イギリス人の義兄の実家は古い石造りの家で、バスルームの床がカーペーットだったを見てびっくりしました。カビを考えたら風呂場の床がカーペットだなんて日本では考えられませんよね。

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<「紅衣」の二十二色(一部)>

また、湿潤な環境に住む日本人は、色に関して独特の感性を持ち得たと思います。和の色の名前って、面白いと思いませんか?

例えば、ピンク系の色は、とき色、桃色、薄紅色、珊瑚色。藍で染めた色も、その濃度によって、藍白、水縹(みずはなだ、)瓶覗(かめのぞき)、新橋色、浅黄色..など、藍四十八色なんて言われます。和の色の名は、草花など自然環境から名付けられたものが多いと思います。また、日本人には実際にわずかな色の違いを見分けることができるセンサーが目にはあるそうです。

地中海のような乾燥した地域では、目の前に見える花の色とも遥か先に見える風景にある同じ花の色はそこまで異なって見えません。一方、湿潤な気候の中では、つまり水分を含んだ空気のフィルターが重なることで遠くに見えるものは”霞んで”薄い色に見えるわけです。つまり、湿度が高く、四季の変化も豊かな自然環境を持つ日本列島に住まう日本人だったからこそ、わずかな色の違いを感じ、それを表現し、季節に応じて快適に過ごすための和服が発達したのだと思います。

衣服はその国々の生活環境と密接な関係があります。戦後、日本人の生活環境は大きく変わりましたが、温暖化は別としても日本の気候風土は基本的に変わりません。湿潤で温暖な気候です。そのため、クールビズやウォームビズが推奨されるのは、温暖化で熱くなったということだけではなく、本来の日本の気候風土に合っていない西洋服を着ることに対して、日本人の身体からのアンチテーゼなのかも知れません。

戦後70年を越えて、改めて日本の伝統文化が見直されている背景には、(近年の過度な民族主義的な視点で日本文化が他国と比べて素晴らしいという論調は脇に置き)、国の成り立ち以前からこの自然豊かな気候風土に育まれた文化は、本質的には身体が否定できないのだと思います。

近年、都内においては着物を着る方は見かける頻度が増えように思います。これは一時の流行というよりも、身体が本能的に求めている、そんな意味もあるのではないかと思います。海外の方が着物に憧れるのは、単に着物が華やかで美しい見た目からだけではないように思うのです。着物と日本の豊かな自然環境は切っても切り離せないものなのです。

Kurenai

【告知】

今春に銀座三越で産声をあげたばかりの着物ブランド「紅衣」が展示会を開催することになりました。

着物は洋服と違いカタチはどれも一緒ですが、色はもちろん生地の素材感で印象が全く変わる衣服です。今回は商品を紹介するという展示会ではなく、 「紅衣」では、今のライフスタイルにあった色と上質な素材を組み合わせることで、洋式化された生活空間でもドレス感覚で着られる色無地をお客様に合わせてご提案させて頂く取り組みとなります。なかなか気に入ったシンプルな着物と出会えない、そんな方に是非足を運んで頂きたいと思います。

また、今回は和ランジェリー「Wafure」の尾上博美さまをゲストにお迎えし、二日目にはプレミアムイベントも開催します。二日目は尾上博美さんも在廊頂ける予定です。
そして、期間中は、ご希望の方にはパーソナルスタイリングセッション(予約制/有料)を行います。お手持ちの着物や帯や小物のコーディネートについてご自由にご相談ください。

都会の喧騒をくぐり抜けお越し頂く場所は、明るいパーソナルな空間。事前にご来店時間をメールにてお知らせ頂けますと幸いです。皆様にお目にかかれますことを心から楽しみにしております。

紅衣 女将 木下紅子

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あなたを魅せる色選び
-紅衣の選ぶ二十二色・色無地オーダー会-

日 時
 2016年
 9月16日(金)12時〜19時 ※尾上博美さん15時まで
 9月17日(土)11時〜19時 ※尾上博美さんは終日在廊
 9月18日(日)11時〜17時

場 所 THE PLACE 渋谷区渋谷 1-17-1 TOC第二ビル406
          渋谷駅十三番出口より徒歩一分
          goo.gl/pdT2jq
主 催 紅衣 KURENAI
協 力 Wafure
ご予約 以下のメールにてお願いいたします。
    info@kimonokurenai.com

詳 細  https://www.facebook.com/events/1060749387379176/

■帯揚げ、帯締めの新色オーダー/期間限定
期間中は紅衣オリジナルの帯締め、帯揚げの新色オーダーもお受けいたします。銀座三越では初期に完売した帯締め、帯揚げもありましたが、今回は完売してご迷惑をお掛けすることがありません。

■パーソナル スタイリング セッション ※ご予約制
お手持ちの着物や帯・小物のコーディネート等についてお買物の有無に関わらずご自由にご相談頂けます。
体験料金 五千円(税込)/五十分 ※通常は一万円/時間

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■プレミアムトーク「紅子好み、博美好みの着物」
和ランジェリー「Wafure」の尾上博美さんをゲストに両者の美と実践的な着物選びについてお話を伺います。

日時  九月十七日(土) 十一時半〜十二時半
定員  限定六名
参加費 二千円(税込)
ご予約 以下のメールにてお願いいたします。
info@kimonokurenai.com

平成二十八年九月六日
【旧暦八月七日/友引(壬辰)白露】

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