昨日、久しぶりに早稲田大学で「きもの学」の講演をして来ました。

この「きもの学」は全日本きもの振興会が早稲田大学に寄贈している講座です。そのひとコマを担当させて頂きました。前回は「リアルクローズの着物」というテーマでしたが、今回は「はじめての男着物」です。

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前回同様に大講堂で約400名の学生さんが対象です。いろいろな場所でお話をさせて頂く事がありますが、さすがに400名というのは早稲田大学での講演くらいです。ただし、数名でも400名でも進行の仕方はあまり変わらず、双方向のお話をさせて頂くことを常としています。

特に着物のような趣味性の高い話題の場合、参加されている方がどういう層かによってどのレベルに標準を当てるか変わって来ます。そのため、一方的にお話をするのではなく、こちらからもいろいろと質問を投げかけさせて頂きます。担当の藤井教授からも「前回同様にどんどん生徒から引き出して下さい!」と仰って下さいました。

参加学生のうち男子学生は3割程度(1割近く増加)、成人式を経験した学生さんも多かったせいか、以外にも着物を着た事のある方が多かったです。

前回とは明らかに変わったのは、自分で着物を着る事ができるようという女子学生の増加です。前回は数名というイメージでしたが、今回は20名程度はいたのではないでしょうか。また、「男着物に対するイメージは?」という質問に対して、大半の学生がかカッコいいとか素敵というポジティブなイメージを持っていました。私自身が学生時代を振り返ると、着物に興味はなかったし、むしろ古くさいというようなイメージがあったような気がします。

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さて、今回90分の講座の中で男着物がどんなものがあるのかをビジュアルを中心にお話をしました。日頃、着物に接点の少ない学生さん(7割が女子学生)が男性着物の専門的な分類などをお話するよりも本質的なことをお伝えしたいと思いました。そのため単に着物の種類を見せるのではなく、様々な男着物を洋服を対比させながら”感覚を共有する”ところに時間の多くを使いました。

実は男性の着物は女性に比べると、自由度が高いと言えます。それは明治以降、特に戦後に女性の着物が様々なシチュエーションによって細分化・複雑化して行ったのに対して、男性の着物は変化が少なかったと言えます。

ちなみに男着物の大きな変化は明治政府が男性の第一礼装を「紋付羽織袴」にしたことでした。いわゆる黒紋付の着物です。もともと武士が着ていた紋付羽織袴は略礼装(=当時の仕事着!?)ではあったものの、必ずしも格式の高いものではありませんでした。現代では男性が紋付羽織袴を言えばフォーマルのイメージですが、それは明治以降ということになります。

現代でなかなか着物復権が難しい理由は、女性の着物の着付やルールが複雑で難しくなり過ぎたということにあると言えます。実際に産地でモノ作りをする仕事を10年以上して理解できたことは、実は伝統と言われる着物の世界でも様々な常識と言われるものはこの数十年に作られたものが多いということです。そんな中で男着物は、ある意味では商売的には魅力的な市場ではなかっために、手つかずだったと言えます。手つかずの自然に価値があるように、手つかずの男着物に様々なヒントがあると言えます。

今回の講座の中では、男着物というものがどういうものかを学生さんが理解することを通じて、今後の着物や伝統文化がどうあるべきかを考えて欲しい、そんなメッセージを埋め込んだつもりでした。

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講座の後半では、今回のアシスタント海老澤くん(※awaiの期待の新人/写真右)をモデルに男着物の着付を実演しました。男性の着物の着付は説明しながらもでも数分で完了します。初めての方でも1時間もあれば覚えられるレベルです。さわかやかな海老澤くんの着姿を熱心にスマホで動画を撮る女子学生もたくさんいました。また、男性の着物姿のバリエーションを見て頂くため、私は袴で講義を行いました。

受講して下さった400名の早大生の中で私のお話が少しでも何かのきっかけになればと思います。

最後に今回も機会を与えて下さいました一般社団法人全日本きもの振興会様、そして、早稲田大学の藤井教授、スタッフの皆様に感謝申し上げます。

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