前回のブログで妻・木下紅子の着物ブランド「紅衣 Kurenai」の発表についてご報告しました。今日はブランドを作るということについて書きたいと思います。

このブログをお読み頂いている方の中には、私が元々はIT業界で主にマーケティングやコミュニケーションの領域の仕事をして来た後に、前職から着物・和装業界に関わるようになり「awai」という着物ブランドを立ち上げたということをご存知の方もいらっしゃると思います。現在は、それまでの様々な経験やノウハウを活かしながら、着物・和装関連、伝統工芸や日本文化に関わる事業やブランドのプロデュースや支援、イベント企画、教育プログラムの開発など行っています。

前職や今回の着物ブランド「紅衣 Kurenai」の立ち上げという仕事は、一般的に”ブランドを作る”という仕事だと捉えられます。ただ、私はブランドは”作る(作れる)もの”ではなく、結果的に”なるもの”だと考えています。

前職時代に、現場の女将であった妻や現場スタッフに日々言い続けていたことは、「売上や利益は、”作るもの”ではなく”結果としてできるもの”」ということでした。これはブランドが出来上がって行くプロセスに近いものだと思います。
私自身のキャリアは営業やコンサルティングセールスという分野から始まっているため、売上目標や数値的な目標設定の重要性は理解しているつもりです。しかし、着物業界に関わるようになった十数年前に驚いたことは、呉服店の店長や販売員には高いノルマが課されていることではなく、女性がお客様の大半なのにも関わらず過度な男性社会で市場性やマーケティングという発想が欠落していたこと、言い換えれば、お客様不在の商いの仕方に大きな違和感を感じたのでした。

昨今、ブランドという言葉は特別な言葉ではありません。私も今まさに「新しい着物ブランドを立ち上げます」と書いています。ただ、本質的には”自称”ブランドがお客様から本当にブランドとして認知して頂けるかどうかはまだわかりません(本来ならここでブランドとは何かを定義した上でお話を進めるべきだと思いますが、今回はあえてそこは曖昧なままでお話を続けさせて頂きます)。

さて、前職で立ち上げた博多織元を母体としたという”ブランド”は、どの程度”ブランド”として認知して頂くようになったのかは第三者的な調査があるわけではありませんのでわかりません。ただ、事業立ち上げから昨年秋に私が離れるまで11年間、一定の認知がされ継続的にお客様が来てくださるファン作りとショップ作りはできていたと自負しています。実際にスタートアップ期の初年度と東日本大震災の直後を除いては、毎年一定の成長率と一定の利益を出し続けていたことは、客観的な事実としてお伝えしてもよろしいと思います。

この実績はもちろん母体会社の大きな協力と現場スタッフの力があってのことです。私が旗振り役として貢献できたことがあるとすれば、目先の数字(=売上)を追うことではなく、お客様に継続的に喜んで頂き続けるためのことを考える必要性を説き続けたということにあると自身では考えています。
その結果、旗振り役として手がけさせて頂いたものが、ブランドとして認知されたか否かは、それぞれのお客様に委ねるしかないのです。

 

来週銀座三越さんで25日から発表させて頂く木下紅子による「紅衣 Kurenai」は、妻や私が「いづれ皆様からブランドと言ってもらえるようになりたい」と思い、あらかじめ”ブランド”と標榜することで、我々自身がその生まれたての子供に名前を付け、関わりを通じて一つの人格として認識する過程と言えるかも知れません。客観的に見れば、生まれたばかりの存在である「紅衣 Kurenai」は将来どんな大人になるのか、そもそもきちんと育つのかどうかさえ分からないと思います。

昨今、大手企業の不祥事などが続き、企業イメージやブランドが毀損(きそん)される(=壊される)ことが起こっています。ブランドに限らず芸能人や政治家、財界人もちょっとした一言や行動によってそれまで積み上げてきた実績が一瞬のうちに崩れ落ちていくようなことも、日常的に起こっています。SNSなどインターネットの影響力が増した今、長年掛けて培って来た信頼感やイメージも落ちるのは一瞬です。

ブランドは作ることはできないと言いました。規模の大小を問わず、法人か個人かは問わず、それが時には失敗や間違いも犯すこともある不安定の存在が、継続的に多く(または一部)の方に支持して頂き続けられるようになるかどうかが重要なのです。

これから私たちが育んでゆこうとしている「紅衣 Kurenai」は、正直に言えば一般的でメジャーなものを目指してわけではありません。年月が経った時に、「ああ紅衣って○○でいいよね」と一部の人であっても支持して頂ける存在になること、そして、規模は小さかったとしてもまずは継続することこそが優先度の高いことだと思っています。
なぜならば、私たちを支えてくださるのは、様々な産地の職人さんであり、その手にある技術です。その技術を継承するために少しでも新しい市場を創造することが、新たに「紅衣 Kurenai」を発表しブランドと呼ばれる存在を目指す目的の柱であるからです。

Kurenai

<「紅衣 Kurenai」オープニングイベント>
日時:  5月25日(水)〜31日(火)
場所 : 銀座三越 7階 サロン ド きもの
イベント:5月28日(土)14:00〜 簡単前結び講座/トークショー(無料)開催いたします。

期間中は妻の紅子本人はほとんど売場にいる予定です。私は期間中に売場に立つ予定はありませんが、28日のトークショーでは少しお話させて頂きたいと思います。多くの皆様のご来場、心からお待ちしております。

なお、期間中はくれぐれもお気遣いご無用にお願いいたします。百貨店様の売場での発表会となりますので、生憎お花を飾る場所がございません。皆様のお気持ちを無駄にしないためにも、是非お気軽に手ぶらでいらしてください。

「紅衣 Kurenai」のFacebookページもできました。「いいね!」を押して頂けると嬉しいです!

期間中の銀座三越の状況などもアップして参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
https://www.facebook.com/kimonokurenai/

平成二十八年五月二十二日
【旧暦四月十六日/先勝(甲辰)】

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