今回の銀座三越でのイベントタイトルである「”和ヲ服スル”ススメ〜サムライの一服〜」。今日はこの〜サムライの一服〜についてのお話です。

一昨日、昨日とご来場頂きお話ができたお客様からこの「サムライ」って何ですか?という質問がありました。
私がこのサムライと表現しているのは、現代のビジネスパーソンを指しています。現代では我々同世代は男女の性を問わずに、多くの方が何らかの職業につき仕事をしています。
企業に勤めれば、組織の中でストレスを感じながらも成果を出すために自身に鞭を打って走らなくてはいけないという方もいるでしょう。いわゆる職業人でなくとも日々の子育てに追われているお母さん達も、タフな環境から体調や精神的にも疲労困憊するという方も少なくないと思います。現代人の多くは、いわば現代「サムライ」なのだと思います。

この企画を通じて私が投げかけたいメッセージは、どんどん世の中のスピードが早まり忙殺されてゆくこの世の中で、ふと立ち止まり自身を取り戻すためのちょっと「一服」しませんか、ということです。その「一服」を必要としているのが、まさに現代の「サムライ」達ということです。

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この企画をさせて頂いている場所はご存知の通り、銀座三越さんという百貨店です。銀座四丁目に位置し世界の銀座の一等地、つまりとても競争の激しい場所です。言ってみればサムライ達の戦場とも言えるでしょう。そんな場所で悠長なことを言っているのかも知れません。

2011年の東日本大震災が起こって一ヶ月経ったか経たないかのことです。当時、私は毎月男性ばかりが集まる小さな茶会にご一緒させて頂いていました。
その時も毎月と同じような感覚でその茶室で点てて頂いた薄茶を一服頂きました。茶碗からゆっくりと薄茶を口にして、喉から温かいものが体の芯を通って行き肚に落ちてゆきました。そして、肚の奥底から息をふーっと深く吐き出したとき、このひと月の間ずっと私自身がたいへんな緊張状態が続いてた、ということに初めて気づいたのです。

その茶会は毎回、社会的にもそれなりの方々が参加されており、年齢も私よりも一回り以上の方々ばかり。このときばかりは、お点前がどうだとか、お道具どうだとか、そういうことはどこかに行ってしまい、心から素直な気持ちで「いまこの一服を服すことができる幸せ」を感じた瞬間でした。

男性が着物生活をしている自然と茶道とは縁深くなるもので、誘われる事も多くそれ以前からも少しは茶道を嗜んではおりましたが、この体験は私の中で(茶道というよりも)茶の湯というものに改めて出会うことができた重要な原体験として残っています。

また、茶道のことではありませんが、被災地にいらっしゃったお客様のお話をしたいと思います。
震災の後に原発の影響もあって、とても着物を着られるどころではない状況が続いていました。そんなの中で、そのお客様は時折上京され、新しい帯や小物をお求め頂いていました。まだ着物が着られないと理解していましたので、最初は不思議に思っていました。しばらくしてお話をお伺いしていて腑にお待ちました。

震災後に被災地で極度の緊張感が続く中で、仕事を終えご自宅に帰って夜ひとりになったとき、箪笥の着物を取り出して着物に帯と小物合わせを考える時間、これが唯一その方をほっとさせてくれる時間だったのです。それまで私は着物や帯を購入された方にはぜひたくさんご着用下さいとお伝えしていましたが、それ以来着物は着るだけのものでないということに気づく事ができました。

「一服」とは別にお茶のことだけを指しているわけではありません。人それぞれこの「一服」の意味することは異なります。この「一服」がお抹茶やお煎茶であっても、器を触れる事でも、書や画を愛でる事でも、着物を着たり触れたりする、何でも良いのだと思います。

私は縁によって日本文化を代表する着物に関わることが仕事になりました。そして、日々着物生活になったことで一般の方よりは少し日本文化に触れる機会が増えるような生活を送っています。そんな私が皆さんと共有したいと思っていることが「和ヲ服スル」ということです。
これから様々なカタチを通じて「和ヲ服スル」ことをオススメしてゆきたい、そう考えています。

平成二十七年十一月二十日
【旧暦十月九日/赤口(庚子)】

和ヲ服スルススメ①ブログ用

“和ヲ服スル”ススメ 〜サムライの一服〜

和服の服、薬を服用するの服。もともと服とは薬ことをも意味しました。
世の中はグローバルに広がりスピードは早まるばかり。この現代に”一服”を提案します。
期間中はゲスト作家をお招きしてのトークイベントやお呈茶も予定しています。

場所:銀座三越 7階 ジャパンエディション
期間:平成27年11月18日(水)〜12月8日(火) 午前10時30分~午後8時
監修:木下着物研究所
参加作家・ブランド
matohu(布物)   ※11/18〜24
二階堂明弘(陶芸) ※11/25〜12/1
中澤希水(書)   ※12/2〜8
Sゝゝ(金工等)
蔦屋漆器店(漆器)

awai(布物)
※期間中は全ての作家・ブランドが出展しますが、※各期間には拡大展開いたします。

【トークセッション/参加無料】
ファッション、陶芸、書の世界で活躍される方々から監修の木下勝博が「服スル」をテーマにお話を伺います。
(1)十一月二十一日(土)十四時〜
「これからの和ノ服」 matohu デザイナー 堀畑裕之氏、関口真希子氏
※終了後にmatohuの茶箱を使用したお呈茶も予定しています。
(2)十一月二十九日(日)十四時〜
「器を服スル」 陶芸家 二階堂明弘氏
(3)十二月六日(日)十四時〜
「書を服スル」 書家 中澤希水氏

※詳細はWebをご覧下さい。
http://kinoshitakimono.com/
https://www.facebook.com/events/1763402180553723/

【お呈茶】
和ヲ服スル茶会/武者小路千家 傳田京子氏
11/22(日)、11/28(土) 各14:00〜、14:45〜、15:30〜
定員:各回3名ずつ
参加費:1500円(税別)
気軽な立礼式でお茶を楽しんで頂きます。
※お申込は銀座三越7階ジャパンエディション(03-3535-1804(サロン ド きもの直通))まで直接お申し込み下さい。
※11/18-11/24は隣接の「サロンドきもの」では、リアルクローズの着物ブランド「awai」が期間限定出店致します。

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